執筆/吉田正幸

今はまだ小さな1つの事実でも、将来の大きな変化のきっかけになるかもしれない出来事を、保育システム研究所 所長でジャーナリストの吉田正幸先生が紹介します。

《特別編2》

新型コロナウイルスと保育

新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえて、緊急事態宣言こそ延長されたものの、特定警戒都道府県以外の自治体では徐々に休業要請や自粛要請の緩和などが行われ、感染のピークアウトを見越したかのような空気感が出始めています。保育園や認定こども園、幼稚園などの教育・保育施設においても、臨時休園や登園自粛などの対応が少しずつ解除される可能性が出てきています。感染の収束が見えてきた自治体から次第に園の再開が進んでいくものと思われますが、感染拡大期から1、2か月、長いところでは3か月を超えるような期間、子どもたちは十分な保育を受けられず、たくさんの友だちとも遊べず、広いところを走り回ることもできず、不自由な思いをしてきたのだろうと想像されます。登園が再開されても、当分の間は“3密”(密閉、密集、密接)を避け、感染拡大以前と同じようなスタイルの保育を行うことは難しいかもしれません。ポストコロナ時代の保育環境や保育方法の工夫が求められることでしょう。

 

ところで、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休園や登園自粛に関連して、登園できない子どもたちやその保護者に対して、園として何かできることがあるのではないか、という課題が浮上しています。登園できず、遊べず、走り回ることのできない子どもたちに対して、Youtubeを使った動画の配信やZoomを利用した双方向の会話、SNSによる保護者とのコミュニケーション、メールによる情報提供、あるいは電話による健康確認など、園でもできることはたくさんあるはずです。これに関して、興味深いアンケート調査が行われました。それが、東京の杉並区保育園保護者 有志の会の「未就学児の保育・幼児教育についてのアンケート」です。この中で、例えば「休園以来、ご利用施設から何か連絡などはありましたか」という質問に対して、回答者(119人)の85%が「はい」と答えているものの、15%が「いいえ」と回答しています。この15%を多いと見るか、少ないと見るかは難しいところですが、杉並区の場合、3月4日に登園自粛要請が行われ、4月9日から臨時休園となったことを考えると、長い家庭で2か月も登園できなかったなかで、園から1度も連絡がなかったというのは非常に残念なことです。

 

 ちなみに、連絡があった場合の内容は、「様子うかがいのメール」が48件で最も多く、次いで「様子うかがいの電話」が26件、「先生たちの録画の動画配信(歌や手遊びなど)」が25件、「教育資材の現物配布(おりがみなども可)」が17件などとなっていました。また、親から見た心配事については、「子どもが体を動かして遊べないこと」が84件と最も多く、次いで「子どもが友だちと会えていないこと」が76件、「子どものこころの健康のこと」が61件、「自分や家族(おとな)のこころの健康のこと」が53件、「子どもの生活リズム(就寝起床時間)が乱れ」ることが47件などとなっていました。保育園や認定こども園、幼稚園といった施設は、子どもたちが施設にやって来ることを前提にしているため、今回のような長期間に及ぶ休園状態の時に、登園できない子どもや保護者に対してどのように対応すればよいのか、そのポリシーやノウハウ、スキルが十分ではなかったと考えられます。また、アウトリーチという“脱天動説”の発想も乏しかったのかもしれません。分散登園の試みやオンライン保育の可能性、臨時休園明けの保育のあり方など、今回のことを契機に、教育・保育や地域子育て支援に関する新たな課題が突きつけられたと言えそうです。良い意味で保育の世界が大きく変わることを期待したいと思います。

 

*杉並区保育者保護者 有志の会
https://rikubo.github.io/ 未就学児の保育・幼児教育についてのアンケート.pdf

 

「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム  吉田正幸の保育ニュースのたまご Vol.4(5月15日配信)より