コラム

コンサルタント・桑戸的な視点 特別編(第6回) 

桑戸真二(株式会社フレーベル館 保育経営アドバイザー)

■ 特別編・処遇改善等加算Ⅱに関するよもやま話 ■

7月と8月の2号にわたって「処遇改善等加算Ⅱ」をテーマにし、このメールマガジンを執筆しました。その後、『桑とニコイチ会』と称し、園経営のコンサルタントたちとの情報交換会&食事会を開催したのですが、処遇改善等加算Ⅱに関するよもやま話がとても興味深かったので、読者の皆様にもぜひ共有できればと、今号では特別編としてご参考になると思われる内容をご紹介します。

桑戸:処遇改善等加算Ⅱは4月にさかのぼって職員に支給できるけれど、ある程度まとまった額になるから2017年中に支給するほうがいいですよね。

コンサルタントA(以下、A):職員の年収の凸凹を平らにするという観点からですか?

桑戸:税金の話です。本来2017年度の処遇改善等加算Ⅱが、2018年の収入に含まれると、2018年の所得税が上がるし、2019年の住民税も上がりますよね。

A:2017年の所得税が10%か、20%になるか、職員にとっては分かれ道ですね。

コンサルタントB(以下、B):うーん…。どちらになるかはその人の年収や控除額によるから、2017年中に支給するほうがいいかは、一概には言えないのでは?

桑戸:税率が20%になるボーダーラインは?

A:課税される所得金額が330万円以上694万9000円までなら20%、195万円以上329万9000円までは10%。

B:年収だとどれくらい?

A:年末調整を思い出してみると、控除額は配偶者や扶養する家族がいる・いない、これだけでも大きな差があるので、何とも言えないですね。もし仮にいないとしたら、社会保険料等の控除、38万円の基礎控除、それから5万円の生命保険料の控除だけで考えると、ざっくり年収600万円あたりがボーダーラインではないでしょうか。

B:年収600万円の一般職員ってそうそういませんよね。都内のごく一部の園の主任クラスかな。住民税は、年額一律の4000円+住民税の課税所得額に税率10%ですから、いつ納税するかだけで、納めるべきものは納めないと、ですね。

A:住民税は、課税される所得金額によって税率が変わることはないですから。

桑戸:支給の方法について、仮に今年の11月の給与から月額4万円を支給するとしたら、4月から10月までの7か月分28万円は一時金で支給することになるのかな?

A:一時金で支給することができる、と回答している行政もあると聞いています。

桑戸:××県でそのような説明があったと噂に聞きましたよ。

B:4月27日に発出された通知文では、職責もしくは職務に応じて決まって毎月支払われる手当による、と記載があるから、本来は一時金ではなく、11月の給与で11月分の4万円と4月から10月までの7か月分28万円を副主任手当として支給するのが正しい処理のように思うけれど、どうなのでしょうね。

桑戸:どう違うの?

A:社会保険料が違ってきます。28万円を一時金で支払うと賞与と同様に、社会保険料を計算するけれど、給与として手当に乗せると、28万円に対する社会保険料はかからない、という結果になります。

B:さかのぼり昇給があった時、昇給差額が支給された場合の例が、「算定基礎届・月額変更届の手引き」に出ているけれど、遡及昇給の差額分は除外して計算していますね。支給方法として問題ないと思いますけど。

桑戸:支給方法については、それぞれの行政に確認したほうがいいですね。

A:処遇改善等加算Ⅱの賃金改善計画書や賃金改善実績報告書では、法定福利費等の事業主負担分の増額を記載する欄があるけれど、皆さん、社会保険料の計算方法はどうするのでしょう?

B:一時金で支給するならば、一時金に社会保険料がかかるけれど、給与で支給するならば、11月から支給しているから11月、12月、1月の3か月で随時改定に該当するかをみるわけで、4万円増なら標準報酬月額は2等級あがるので、2月から社会保険料があがることになる…。

桑戸:では、4月から1月までは社会保険料は変わらない?

B:処遇改善等加算Ⅱに関していえば、そうですね。法定福利費の事業者負担分の計算方法として、労働保険料のように処遇改善等加算Ⅱの支給額に料率を乗じるものと、社会保険料等のように標準報酬月額に応じて算出するものと、区別して計算しないといけないかもしれないですよ。

A:●●市の説明会資料では、賃金改善計画書、賃金改善実績報告書、いずれの記入例の法定福利費等の欄には、約18%で計算された額となっていました。園が負担した法定福利費の額の実態とは違っていても構わないということですかね。

桑戸:18%の根拠は?

A:さあ…。労働保険料、社会保険料の事業主負担の料率を積み上げでも18%まではいかないので、ちょっと多いという印象ですね。

桑戸:法定福利費の事業者負担分は、どのように計算すべきと考える?

A:●●市の記入見本は、逆算して約18%を乗じている、とわかっただけなので、●●市に確認したわけではないです。提出先の市区町村等に確認するのが一番かな。

B:ローカルルールの場合も多々あるので、担当者の見解ではなく、公式判断をもらうといいですね。

桑戸:処遇改善等加算Ⅱで園が加算を受けた総額が、職員への支給にかかった実績より多かったら、その差額は返還することになる?

B:「差額が生じた場合には、翌年度において、その全額を当該年度の加算対象職員の賃金改善に充てること。」と4月27日の通知文にありました。

A:そう、あった。不思議なのが、当該年度の加算対象者のだれにいくら支給し、全額を賃金改善に充てたことの報告については何も書いてなかったですね。

B:極端な話、その全額を当該年度の加算対象者の1人に支給することも可能なのですか?

A:給与規程の条文次第ですね。

B:あっ!そうですね、対象者、金額は理事会の承認を得る、となっていれば、理事会決裁となるから、全額を1人に支給するのは、理事会として認めるはずがないですね。

桑戸:実績報告をさせるのに、差額を返還しなくてよい、ってどうなの?

B:職員への支給については、要件を満たさなければならないので、差額は法定福利費等の部分でしょう。

桑戸:職員へぴったり支給して、事業主負担分の法定福利費等で生じた差額を、さらに職員に支給する、これなら園の持出はゼロ、ですね。

A:さらに支給した部分には、法定福利費がかかるから、ゼロではないです。

B:多少の持出は致し方ない、としましょう。

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桑戸真二・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会理事、NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2017年9月15日号から)

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