コラム

保育のいまがわかる!Webコラム吉田正幸の保育ニュースのたまご(2月1日配信分)

「来年度予算案にみる新型コロナ対策」

新型コロナウイルス感染症の拡大に歯止めがかからず、東京、大阪をはじめ11都府県では2月7日まで緊急事態宣言が発出されています。とはいえ、1回目の宣言の時に比べると、世田谷区のように登園自粛を求める一部の自治体を除いて、臨時休園や登園自粛に踏み切る幼稚園、保育所、認定こども園はほとんどないのが特徴です。  そんな状況にあって、感染症の収束状況がどうであろうと、今後も継続的に感染症対策を講じていくことが大切です。そこで、今回は、国の予算における来年度以降の主な感染症対策を見ておきたいと思います。

まず、2020(令和2)年12月に閣議決定された「令和2年度 第3次補正予算案」では、内閣府、厚生労働省、文部科学省がそれぞれ感染拡大防止対策として、保育所や認定こども園、幼稚園などに対する支援を行うこととしています。

具体的には、

  • 職員が感染症対策の徹底を図りながら保育を継続的に実施していくために必要な経費、
  •  保育所等が配布する子ども用マスク、消毒液など一括購入や保育所等の消毒に必要となる経費 

について補助するというものです。職員に係る経費というのは、いわゆる「かかり増し 経費」と呼ばれるもので、職員が勤務時間外に消毒や清掃などを行った場合の超過勤務手当や休日勤務手当等の割増賃金など、通常は想定していない感染症対策に関する勤務の実施に伴う手当が該当します。

加えて、厚生労働労省の来年度予算案では、「保育所等の職員は、感染症対策への不安や疑問を抱え精神的に多大な負荷を負っている」ことから、感染防止対策のためのメンタル面での相談・支援事業も行うことにしています。具体的には、「気軽に相談できる感染対策相談窓口の設置や職員の尊厳を重視した専門家による相談支援を行うために必要な経費を補助」します。  これに関連して、文部科学省では、幼児教育推進体制の充実・活用強化事業の一環として、新型コロナウイルス感染症で顕在化した課題への対応のため、幼児教育アドバイザーと保健、福祉等の専門職との効果的な連携を図りながら、適切なアドバイスが受けられるような 体制の充実を目指すとしています。

また、厚生労働省、文部科学省とも、ICT化を進めるための予算を計上していますが、単に保育所、幼稚園、認定こども園などの教育・保育の周辺業務や補助業務に係るICT化だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンラインによる職員研修や保育参観、保育動画の配信やアプリを利用した家庭との連絡など、「新たな日常」に対応するためのICT環境整備に力を入れるのが大きな特徴と言えます。

さらに、文部科学省では、「新型コロナウイルス感染症下における切れ目ない幼児教育の実践」に向けて、「新型コロナウイルス感染症対策を取りながら効果的な幼児教育の実践を図るため、ICT機器の活用方策など臨時休業等をも視野に入れた幼稚園教育の在り方等に関する調査研究を実施する」としています。そのための研究テーマ例として、「家庭への動画配信や家庭との情報共有、連携」「小規模集団での幼児教育の実践の工夫」「オンラインを活用した小学校などの他機関との交流の在り方」「行事の実施の工夫」などが挙げられています。

関係府省によるこれらの感染対策には、感染拡大防止対策と感染症下における切れ目ない幼児教育・保育の実施という2つの側面があります。保育所や幼稚園、認定こども園など子どもを受け入れている施設等においては、万全の感染拡大防止対策を講じることが最も重要であることは当然です。しかし、それと同時に、ICTやSNSの活用、オンラインや分散登園の工夫などによって、どんな事態に陥ろうと子どもたちに幼児教育・保育を継続して提供できるような体制を講じておくことが大切です。今回の国の予算への対応も含めて、是非とも保育現場で新型コロナ対策が着実に進むことを期待しています。

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