師岡章(白梅学園大学子ども学部教授)
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第 4回 職種間連携を活発にしよう!
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「すべての教職員で子どもを見よう!」
こんなスローガンを掲げる園も多いことでしょう。全園児数が数百名を超える、いわゆるマンモス園を除けば、たいていの保育現場は小学校よりも小規模で運営されています。心がければ、園長をはじめ、すべての教職員が在園児(保護者も含む)の顔と名前を一致させ、みんなで保育を進めることは可能なはずです。
◆多職種間の協力・連携の困難さ
ただ、かけ声だけですべての教職員が協力・連携できるものでもありません。特に、クラス担任として日々保育にあたる幼稚園教諭や保育士といった保育者と、他の職種との関係は意外に難しいようです。
例えば、ある保育園でクッキング保育を相談した際、子どもの自発的な活動を優先したい保育者と、衛生上の配慮を重視したい栄養士・調理員との間で意見が食い違ったそうです。
また、外遊びを活動的に展開したい保育者と、体調管理やケガの防止を優先したい看護師との間でも遊び時間や遊具の取り扱い方について、対立が見られたそうです。
ステレオタイプ的な言い方で誤解を与えるかもしれませんが、職種が異なると多かれ少なかれ、こうしたズレは生じるようです。このように職種が異なると価値観にも違いが見られます。まずは、こうした違いを互いに理解し合うことが大切です。
◆「尊重」と「絶対視」を区別する
それぞれの職種には専門性があります。また、学んできた養成課程や所属する団体には独自の文化も見られます。
またまた誤解を恐れずに言えば、幼稚園教諭・保育士といった保育者は文系色が強く、物事の見方、表し方も主観的である場合が多いようです。一方、栄養士・栄養教諭や看護師・養護教諭などは理系色が強く、客観的に物事を見、業務の結果を数字で表すことに長けています。さらに、調理員やバスの運転手など、いわゆる現業職の方々は、わざ(技術)が問われる世界だけに、職人気質の傾向も見られます。私たちは、こうした各教職員の基礎となる免許や資格に基づく専門性や文化の違いを理解したうえで、互いに尊重し合う姿勢が求められるでしょう。
ただ、「免許や資格に基づく専門性や文化の違いを尊重する」とは、各職種の発言や行動を絶対視することではありません。当たり前の話ですが、いずれの教職員も人間であり、その判断や行動にはミスも起こります。だとすれば、職種別の専門性は尊重しつつも、他の職種の意見も取り入れ、担うべき仕事の質を向上させる必要があるでしょう。
◆「聞く耳をもつ」関係づくりを
そのためには、まず互いに専門性に固執せず、他の職種の意見を聞く姿勢をもつことが大切です。
「プライドが傷つく!」という方もいるかもしれませんが、保育は「子ども」という他者のために尽くす仕事です。各職員が自己満足のためではなく、「子どものため」に自らの仕事を改善、向上させていく必要があります。互いに「井の中の蛙」とならずに、開いた関係、向上し合える関係をつくってほしいものです。自分の意見を言うよりも前に、異なる考え方に耳を傾ける努力をすれば、そうした関係づくりも進むことでしょう。
◆問われる園長のマネジメント力
多職種間の関係を開いたものにするためには園長の役割も大きいと思います。園長には積極的に多職種が一堂に会する機会を設けてほしいものです。
また、職種上、人数も多く、集う機会が多い保育者の意見が主流を占める傾向は強いと思いますが、その結果がバランスを欠くこともあります。少数意見というと大げさかもしれませんが、人数が少なく、子どもに直接かかわることも少ない職種の意見も引き出す努力をしてほしいものです。
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プロフィール:白梅学園大学教授。幼稚園教諭・保育士として勤務後、保育研究者の道に。東京学芸大学大学院修了。著書に『食を育む』『若手保育者の育成法 ―組織の活性化は若手の成長がカギ!』(フレーベル館)、『子どもらしさを大切にする保育~子ども理解と指導・援助のポイント』(新読書社)、『保育カリキュラム総論~実践に連動した計画・評価のあり方・進め方』(同文書院)ほか多数。
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