コラム

コンサルタント・桑戸的な視点 第11回

桑戸真二(株式会社フレーベル館保育経営アドバイザー)、安岡知子(特定社会保険労務士)

■ 第23回 「無期転換ルール」を就業規則に入れる等の対応が必要です ■

日経新聞(1月29日朝刊)に『私立高 雇い止め204人「無期転換」適用外増の恐れ』という記事が掲載されました。全国の私立高校で働く有期雇用教員のうち、3月末までの雇い止め通告を受けた人が少なくとも204人に及ぶ事態に対し、全国私教連は「無期転換ルールを就業規則に入れるなどの対応が必要だ」と訴えている、という内容でした。

期間の定めがある労働契約(以下、有期契約)が5年を超えた職員から申し込みがあったら、次回から、期間の定めのない労働契約(以下、無期契約)に転換しなければならない無期転換ルール(労働契約法18条)に対し、園としての対応について考えたいと思います。先月号に引き続き、園の人財コンサルタントをされている特定社会労務士の安岡知子先生にお話を伺いました。

桑戸:

新聞記事では、就業規則に入れるなどの対応が必要だと全国私教連が訴えているとありましたが、園であれば、無期転換ルールを就業規則に入れるとはどういうことでしょうか。

安岡:

こんにちは。安岡知子と申します。先月に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

無期転換ルールによって、パート職員等の有期契約の職員が無期契約に転換する権利が今年の4月から発生します。そして、来年の4月から無期契約になったら、それ以降は、当然、契約の更新はありません。現状の就業規則では、定年年齢を定めているのは正規職員のみです。無期契約となったパート職員の定年年齢を定めていませんので、このままでは終身雇用ということになります。さすがに終身雇用は、園にとって様々なリスクが想定されます。そのためにも、就業規則に、無期契約のパート職員にも定年年齢を定めることが必要になります。

桑戸:

保育者の人材不足の現状を考えれば、リスクといわれてもあまりピンとこないかもしれませんが…。

安岡:

確かに、今は余人に代えがたい保育者かもしれません。しかも人手不足の折でもあります。

しかし、どんなに有能な人でも高齢になればなるほど、体力、視力、聴力、集中力、判断力…等は落ちていきます。大切な子どもの命を預かる仕事ですから、終身雇用のリスクを想像していただきたいです。私は、無期契約のパート職員にも定年年齢を定めるべきだと考えています。

桑戸:

園長先生であれば、無期契約のパート職員が定年を迎えても、まだまだ十分に能力があって働けるのであれば、引き続き園で活躍してもらいたいと考えますよね。

安岡:

そのような職員に対しては、定年後は有期契約のパート職員として雇用することをお勧めします。有期契約を締結するにあたっては、事前に個別面談を実施し、本人の希望をヒアリングし、現状の体力、視力、聴力…等を把握しましょう。これらを踏まえて、有期契約の期間、労働時間、時給、職務内容を決定します。理事会の承認を得るとさらによいと思います。そしてこれらの過程を踏み、はじめて、有期契約を締結します。契約締結の際には、園として担ってもらいたい役割をきちんとお伝えます。なお、契約期間については、体力などの変化があるかもしれないことを考慮し、1年以内をお勧めします。

このように、有期契約を締結する前には、契約更新の都度、面談→雇用条件を検討→決定(理事会承認)→有期契約締結→有期契約スタート→有期契約満了、のサイクルで運用します。面倒な手順のように感じられるかもしれませんが、質の高い保育を展開していくためには必要だと思います。

桑戸:

無期契約となったパート職員が定年を迎えても、有期契約に戻してパート職員として引き続き雇用ができることもあるのですね。

では、さらに有期契約のパート職員として、契約を更新し続けて5年を超えたら、再度、無期転換権をもつことになりませんか?

安岡:

それについては特例があります。「有期雇用特別措置法」により、定年を迎えた後に、有期契約で働く場合は、有期契約の期間が5年を超えても、無期転換権が発生しません。この特例の適用を受けるためには、「第二種計画認定申請書」を都道府県労働局に提出し、認定を受けます。その際に、無期契約のパート職員の定年年齢を定めた就業規則を添付することが求められます。

桑戸:

先月号と今月号を通してお話しくださった、園がすべき対応を改めて整理してもらえませんか。

安岡:

園として、以下のように無期転換ルールに対応してください。

①正規職員とパート職員の職務内容の違いを明文化し就業規則や労働条件通知書で示すこと(1月15日号を参照)

②無期契約のパート職員の定年年齢を就業規則に定めること

③第二種計画認定申請書(②の就業規則、要添付)を労働局に提出し、認定を受けること

④定年後に、引き続きパート職員を雇用する場合は、個別面談を実施の上、契約内容を決定し、有期契約を締結すること

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桑戸真二・プロフィール:NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

安岡知子・プロフィール:社会保険労務士法人人財総研役員、㈱福祉総研KYOSTA事業部長。園での勤務経験をもとに、それぞれの法人の現状を踏まえた「人」に関わる分野での「現実的なアドバイス」「実施可能なご提案」などで園経営をサポート。2017年度保育ナビに「それぞれの園のための就業規則を考える」連載中。

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2018年2月15日号から)

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