コラム

保育新時代を読む! トピック&解説《特別編》

監修/桑戸真二  解説/小出正治

園を取り巻く状況が大きく変化するなか、園のマネジメント層には、より一層、園経営・運営面での上手なかじ取りが求められます。持続可能な園になるために欠かせないいくつかのポイントを、保育界に精通したNPO福祉総合評価機構 小出正治先生に解説いただきます。

《特別編》

策定等への要請がより高まった、子どもの安全を守るための各計画について

教育・保育施設の安全管理をめぐり、またしても痛ましい事故が起こりました。これを受け、国は通園バスを使用するすべての幼稚園・保育所・認定こども園等に対し、一斉点検の実施を求めることや、10月中を目途とした国として初の統一マニュアルの策定を決めたとのことです。

昨年の福岡県でのケースもそうですが、事故を起こした園では降車後の人数確認すら行っていなかったとされ、にわかには信じがたい思いがし、読者の皆様も同じ無念さを感じられたことでしょう。

また、私などが申し上げるまでもないことですが、通園バスの運用に限らず、様々な安全確保の取り組みは、例えば訓練も点検も、日頃行うなかで形骸化する――実施すること自体が目的となってしまい、本来の意義が見失われることのないよう、経営層が常に現場に注意を促すことも重要であろうと、改めて感じました。

■ 保育所では来年4月から「児童の安全確保に関する計画」の策定が義務化される見込みに

「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)」(※)等に関し、その一部を改正する省令案が検討されており、現在パブリックコメントの募集が行われています(9月21日まで)。 同案は内閣府の7月の子ども・子育て会議でも示されており、ご存じの方も多いと思いますが、この中では、保育所等は「児童の安全確保に関する計画」を策定し、かつ「計画内容の職員間の共有や体制確保、定期的な訓練や研修、保護者への説明の実施などにより、その実効性を確保させること」とされています。

また、これらは保育所及び家庭的保育事業所等においては経過措置を設けることなく、施行期日である来年4月からただちに義務化されることとなっています。

幼稚園等にはすでに、学校保健安全法第27条により、「学校安全計画」(「当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する事項」を定めた計画)の策定・実施が課されており、例えば「学校安全計画 例」などで検索すると、自治体等が公表している様式例を参照することができます。

また同法の施行規則(昭和33年文部省令第18号)においては、保育所等で言うところの園医・嘱託医や同歯科医などが計画の立案に参与することも求めています。

各保育所ではこれらも参考としながら、同計画を園として定め、組織内で周知させる取り組みが必要となるということです。

■ 同計画を様式例のコピーペーストで終わらせず、安全の確保・向上に役立つものとするために

上記のインターネット上で見られる学校安全計画の例は、いずれも一見すると保育の年間指導計画に似た、年間12か月の安全確保の取り組みを分野ごとに列挙したものとなっています。

内容は分野・項目別に整理されていますが、例えば子どもへの安全教育については、日常の保育のなかで実施している子どもへの保健安全指導や、それらを定めた年間保健計画とも整合を図る必要があるでしょう。

また点検・訓練などの安全管理の活動についても、通年で行うものと季節特有のもの、それぞれの頻度や担当者などを整理し、対応するマニュアルやチェックリストの有無や内容なども確認するなど、計画を様式例のコピーペーストで終わらせず、現場の取り組みと結びつけるための、実際の運用を見越したメンテナンスを行うことが重要ではないかと思います。

■ 災害及び感染症・食中毒発生時の業務継続計画も、策定・周知などが努力義務化へ

また、前回の本稿でお伝えしたBCPについても、すでに策定などが義務づけられている介護・障害関連施設などと同様に「業務継続計画」という名称で、今回の基準の改正において、策定や研修・訓練の実施が努力義務化されることとなっています。

改正案ではなぜか研修・訓練について、「“感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための”研修・訓練」(「“”」は筆者付記)と、感染症・食中毒に限定した表記となっています。計画の策定も同様なのかどうか、疑問が残りますが、省令のもととなる上記 (※) では、「感染症や非常災害の発生時」のための計画を障害児入所施設等に対して求めており、先行して義務化されている前述の他の種別の状況からも、災害・感染症の両分野で準備を進めることが望ましいのではないかと考えます。

なお、本稿では安全面に話題を絞って述べましたが、改正案にはこれら以外にも、保育所等が併設の児童発達支援事業所などとの間で、一定の要件を満たす場合に設備・人員を共用できることとする措置などが挙げられています。

【参考】

パブリックコメント及び省令案の概要はこちらから
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495220145&Mode=0

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2022年9月20日号から)

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監修:桑戸真二・プロフィール:(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

解説:小出正治・プロフィール:NPO福祉総合評価機構 常務理事・本部事務局長として、保育・教育施設の第三者評価や事業者ネットワーク「保育所サポートデスク」の運営に従事。自治体の研修講師受託、書籍の共著・編集協力なども手がけている。

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