コラム

コンサルタント・桑戸的な視点 第1回

桑戸真二(株式会社フレーベル館保育経営アドバイザー)、木元有香(鳥飼総合法律事務所弁護士)

■ 第13回 幼稚園、保育園、認定こども園における法令遵守の大切さ ■

最近、幼稚園・保育園の法令違反がニュースでも取り上げられることが増えています。今号では、幼稚園、保育園、認定こども園(以下、まとめて「園」という)の法令遵守の大切さについて、保育士資格を有する弁護士である木元有香氏にお話を伺いました。

桑戸:

相次いで園の法令違反についてのニュースが報道されています。これらの事件ほどではないにしても、園においては、法令遵守の意識が薄いな、と感じることが多々あります。まず、補助金を不正に受給すると、どのようなペナルティを課されるのでしょうか。

木元:

補助金の種類にもよりますが、一般的には、行政庁から園に対する補助金の交付決定が取り消され、補助金を返還しなければなりません(注1)。返還する補助金には加算金を付ける必要がありますし、期限までに返還しない場合は、延滞金も納める必要があります(注2)。

また、「偽りその他不正の手段により」補助金等の交付を受けた者は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を課されることになります(注3)。行為者のみならず法人も罰せられます(注4)。

ここで、子ども・子育て支援制度に入っている園(特定教育・保育施設)を具体例として考えてみましょう。

もしも、それらの園において、施設型給付費又は特例施設型給付費の請求に関し不正があった場合は、返還や刑罰等に加えて、市町村長が、当該特定教育・保育施設にかかる「確認」を取り消し、又は、期間を定めてその確認の全部又は一部の効力を停止することができます(注5)。確認を取り消された教育・保育施設の設置者は、取消しの日から5年を経過するまでの間は、特定教育・保育施設にかかる確認の申請をすることができません(注6)。

補助金の受給に限らず、子ども・子育て支援法に規定された条項に違反する場合も同様のペナルティを受ける可能性があります(注7)。

桑戸:

要するに、法令に反すると園の運営ができなくなったり、園長・理事長・施設長等に刑事罰が課されたりする可能性があるということですよね。当たり前のことなのですが、この業界では、「子どものために」ということで、法を軽々と乗り越えてしまう例が見受けられ、個人的には危機感を持っているのです。労務に関するペナルティについても教えてください。

木元:

電通社員の自殺問題で残業について世間の厳しい目が注がれ、日本中の企業が一斉に「働き方改革」のピッチを上げています。

そんな中、園だけが、休憩時間なし、有給休暇なし、残業時間の上限なし、持ち帰り残業有り、残業代支払いなし、で済むとは考えないでください。

それぞれ、労働基準法違反として罰則が課されたり、民事法上の損害賠償責任を負ったりする結果となります。労働基準監督署から違反事業場として法人名が公表される場合もあります。そうすると、園の評判も傷つきますし、それに何より、人材不足とされる業界で、貴重な働き手が集まらなくなります。そうすると、先生方が実現したいと望んでいらっしゃる子どものための理想の園づくりやその継続がますます難しくなるのではないでしょうか。

桑戸:

法令を遵守することこそが、職員を守り、子どもを守り、そして子どものための理想の園の運営を続けることに繋がるということですね。ちょうど新年度ですから、改めて法令遵守の大切さを強調しておきたいと思います。

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注1 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第17条、18条

注2 同法第19条 

注3 同法第29条

注4 同法32条

注5 子ども・子育て支援法第40条1項

注6 同法40条2項

注7 同法40条各号

 

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桑戸真二・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会理事、NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

木元有香・プロフィール:東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。鳥飼総合法律事務所で社会福祉法人・保育施設等を担当する。小学生、認可保育所に通う3歳児、0歳児の3児の母。平成26年に保育士資格取得。

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2017年4月15日号より)

 

 

 

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