コラム

保育のいまがわかる!Webコラム吉田正幸の保育ニュースのたまご(2月15日配信分)

「来年度予算に見る保育・保育者の魅力向上策」

厚生労働省の「保育の現場・職業の魅力向上検討会」は、2020年9月末に報告書をとりまとめましたが、これを受けて同省は来年度予算案に関連事業を盛り込んでいます。これらの施策によって、魅力ある職場づくりの支援や保育の現場・職業の魅力発信、啓発セミナーの開催などを進め、保育人材の確保だけでなく、離職防止や人材定着、就業継続、ひいては保育の質の向上につなげることを目指しています。

 具体的には以下のような事業を行うとしています。

  • 保育人材確保のための総合的な対策【一部新規】

・保育士の専門的な保育技術を可視化するなどの保育の見える化を含め、情報発信のプラットフォームの作成や保育体験イベントなど、様々な対象者に対する保育士・保育の現場の魅力発信を実施する。

・保育士の業務負担の軽減・働き方の見直しを行い、魅力ある職場づくりを支援するため、社会保険労務士などが巡回し、保育所等を支援するとともに、魅力ある職場づくりを行う保育所等の啓発セミナー等を支援する。

・保育士の補助を行う保育補助者の勤務時間週 30 時間以下の要件を撤廃し、コロナ禍にあっても保育を継続的に実施するために尽力している保育士の業務の負担を軽減する。

・保育士・保育所支援センターの機能強化を図るため、情報発信機能の強化や管内の保育所等を巡回してマッチング機能の向上を図るとともに、シルバー人材センターとの連携や保育補助者等のマッチングを新たに実施する。

  • 保育士・保育の現場の魅力発信事業【新規】

・保育士という職業や保育の現場の魅力発信:保育技術の見える化など情報発信のプラットフォームを国において作成し、それを活用しながら保育体験イベント、情報発信サイト、進路指導担当や中高生などに対する魅力発信などの取り組みを実施。

・保育士が相談しやすい体制整備: 保育士の相談窓口(SNS等も含む)の設置(心理職や社労士等を配置し、人間関係や労働条件等に関する相談支援を実施)、相談内容に応じて保育所等に対して必要な指導・助言

  • 若手保育士や保育事業者等への巡回支援事業【拡充】

・保育士の離職防止や保育所等の勤務環境の改善を図るため、各種支援員が保育所等を巡回支援するために必要な費用の一部を補助する。その際、以下の事業メニューを新たに追加する。

・社会保険労務士などが巡回し保育所等の事業者を支援する「保育士働き方改革支援コンサルタント」のメニューを追加。

・魅力ある職場づくりに向けた保育所等の啓発セミナーを開催。

・保育所の自己評価等の充実により保育の質の確保・向上を図り、働きがいを高められるよう「保育実践充実コーディネーター」のメニューを追加。

・公開保育実施の支援や各保育所の自己評価の促進を図るため、「地域協議会(仮称)」を開催。

保育所や保育士などの魅力向上について、ここまで力を入れるのは恐らく初めてではないかと思われますが、言い換えれば、それだけ保育人材の確保・定着・資質向上に危機感があるからだとも言えます。さらに、その背景には、単に待機児童対策としての人材確保だけでなく、社会的に保育の質の向上が求められていることも影響していると思われます。  保育の現場・職業の魅力向上に関して、上記のように国の予算レベルでは積極的な取り組みが始まろうとしています。しかし、最も大切なのは、肝心の保育現場が自分たちの足元から魅力を高めるべく努力し、目に見える形で実践していくことです。そのためにも、園のトップリーダーやミドルリーダーの役割は大きいと言えます。

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