コラム

知っておきたい!園経営の視点 第9回

桑戸真二(株式会社フレーベル館 保育経営アドバイザー)、松本和也(一般財団法人総合福祉研究会本部事務局長)

■ 第9回 社会福祉法改正で留意すべきこと ■

社会福祉法改正にともない、保育所・認定こども園等を経営する社会福祉法人は対応、準備を始めておられると思います。今号では、ご法人が留意すべき事項について、11月11日に公布、発出された政省令や通知に基づいて要点をお伝えしたいと思います。社会福祉法人の経営・制度に詳しい松本和也氏にお話を伺いました。

桑戸:

社会福祉法人制度改革の一番に、経営組織のガバナンスの強化が掲げられていますが、具体的には経営組織はどのように変わるのでしょうか。また、変更に向けた対応、準備についても教えてください。

松本:

はじめまして。松本和也と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

大きな変更事項を3つ挙げて、それぞれの対応、準備を説明します。

【新しい経営組織の編成】

改正社会福祉法(以下「新法」)では、経営組織の位置づけが変わります。評議員会が必置となり、これまでの諮問機関としての位置づけから、理事・監事(以下「役員」)の選任・解任権を持つ議決機関へと変更されます。そのため評議員選任・解任委員会を組織し、3月までに7名以上の評議員(平成27年度決算におけるサービス活動収益が4億円以下の法人は4名で可)を選任しておく必要があります。

【評議員、役員、評議員選任・解任委員】

4月以降の評議員は、現行の理事会が候補者を推薦し、3月までに評議員選任・解任委員会で選任しますので、まずは、その構成員である評議員選任・解任委員を現行の理事会で選出する必要があります。原則として法人監事、職員、外部委員の3名で構成しますが、外部委員が含まれていれば、それ以外はどのような構成でも差し支えありません。

現行の役員の任期は、原則として“6月の定時評議員会終結の時まで”であり、それ以降の役員は定時評議員会で選出します。

【評議員、役員等の任期】

評議員の任期は4年または6年、役員の任期は2年ですが、これまでのように“○月○日まで”の“○年間”ではなく、“○年後の最後の会計期間終了後の定時評議員会終結の時まで”という終期に変わりますので、委嘱状や就任承諾書の記載にも留意する必要があります。

なお、現在の役員が評議員になる場合には、新法では評議員と役員の兼任が認められていないため、3月31日をもって役員を辞任し、生じた欠員を補充する必要があります。

桑戸:

経営組織の変更に合わせて定款を変更する必要が出てきますが、厚生労働省から提示された定款例のとおりに変更すればよいという理解でよろしいでしょうか。

松本:

定款の変更についてお話しします。

【定款変更】

これまでの社会福祉法人の定款は、いわゆる「定款準則」に基づいた作成が求められていましたが、新たに示されたものは「定款例」です。これは、新定款の記載の内容のうちには法人の選択によって異なる部分があるためで、逆に言えば法人の活動の根拠となる定款の内容について、法人が自らしっかりと吟味して定めることが必要です。

定款変更認可申請にあたっては、新旧対照表作成の要否について、各所轄庁の方針を確認しておくことが必要です。

桑戸:

平成29年4月1日の新法施行日以降、決算に向けたスケジュールにおいて留意すべき点を挙げていただければと思います。

松本:

決算手続きと社会福祉充実計画に関してお話しします。

【決算手続きの留意点】

来年からは、毎年6月末頃に開催する「定時評議員会」の2週間以上前に、理事会を開催しなければなりません。また資産総額の変更登記の期限が6月末に変更されました。これらのことから現実的な作業日程としては、5月中を目途に決算の額を固め、6月初旬に監事監査を実施し、6月10日頃までには理事会を開催して決算承認を受け、さらに6月最終週頃に定時評議員会で承認を得て資産総額の変更登記を行うことになります。

【社会福祉充実計画】

来年からは、社会福祉充実計画を作成のうえ、6月末までに所轄庁に提出しなければなりません。この計画は公認会計士や税理士などの会計専門家の確認を受けて評議員会で承認を得る必要がありますので、6月の理事会から定時評議員会の前までに会計専門家に確認の依頼を行う必要があります。

この計画の基礎となるのは「社会福祉充実残額」ですが、この額は決算を待たずとも概算しておくことが可能ですので、12月中に発出予定の通知を注視して、早めに計算しておくとその後の事務手続きが楽になるでしょう。

なお、社会福祉充実残額がマイナスであっても届け出は必要ですので、必ず算出しなければなりません。

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桑戸真二・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会理事、NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館顧問。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

松本和也・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会本部事務局長。社会福祉法人の経営、制度に関する著書が多くある。『新しい保育所会計と資金運用ルールの実務ガイド』(実務出版㈱)『これでわかる!会計基準と299号通知』(筒井書房)等

 

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