撮影:渡辺 悟
執筆/一般社団法人heARTfulness for living協会
代表理事 戸塚真理奈
前回の鈴木秀弘先生のコラムでは、先生方の中から本音でマインドフルに語り合う場を希望する方が出てきたエピソードのご紹介があり、その伏線として、子どもたちのけんかの様子についても記されていました。信頼感を礎に、自分の気持ちに正直に相手と交流する子どもたちのありようから、大人がインスパイアされ本音の語り合いへの願いが内側から湧き上がってきたことに、改めて、子どもたちのありのままの素晴らしさや感性そのものに尊敬の気持ちが沸き起こります。また、自分たちの本音を大切にしたいと思うきっかけの1つとして、これまで3回にわたり先生方それぞれの内面にアクセスしていただいたこと(「保育ナビ」2021年5月号、8月号、11月号掲載)も、“畑を耕す”作業として多少なりとも影響したのではないか、そうであればいいなあと願うばかりです。
第4回の講座(最終回、「保育ナビ」2022年2月号掲載)に先立ち、このような流れでマインドフルな会議へのニーズが生じたことを秀弘先生から聞き、最終回では「自分たちは、愛のかたまりである」という命の根本を意識するような内容にしたいと感じました。だれかとのかかわり合いを深める上で、命ある自分の可能性に意識を向けることは、最も大切な第一歩となるのです。
講座が3か月に一度の頻度であるなか、当日は、前回、前々回を思い返すためにボディーワーク(「ご縁を集めるワーク」)でウォームアップをし、周囲の存在と自分自身が「時空を超えて共にある」ということを感じてもらえるよう意図しました。(方法については、保育ナビYouTubeチャンネルの動画もご参照ください。https://www.youtube.com/watch?v=GJ8LA02QC4M)
そして、その後は言葉のリードを受けながら想像力を働かせる「ビジュアライゼーション」のワーク(「みんなのために祈るワーク」)を通じて、意識の目線を上に高めてもらうよう意図しました。(方法については、保育ナビYouTubeチャンネルの動画も参照ください。https://www.youtube.com/watch?v=f_IFg5cVHIw)
それぞれのワーク後のシェアリングでは、参加者の中に(今は亡き)ご先祖や遠く離れた家族などの存在を感じたり、また、この地球で保育者として生きていることの意味に想いを馳せたり、初心に立ち返るような経験をしたとの発言も聞かれました。
締めくくりは「愛を届けるワーク」を。ワークのパートナーとなった相手から届けられる熱量や気持ち、優しさを感じ取ることを意図し、互いに、愛の気持ちを受け取ったり相手に届けたりすることをくり返しました。多くの参加者が溢れる涙もそのままに、時間ごとに代わるワーク相手から愛を受け取り、そして今度は自分から愛を届けることに全身全霊取り組む、純粋で熱量の高い時間をもつことができました。
この最終回では以上のようにいくつかのワークをお届けしましたが、一貫してテーマに置いていたのは「視座を高くもち、愛を細胞で感じ取る」という点です。お伝えしてきたことの総集編として、資料で説明を重ねるよりも、自分の体や五感を使い、感じることにエネルギーを注いでもらいたいとの想いでした。
鳥とアリが息づく、今の自分
マインドフルネスのワークをお届けしてきたなか、つくづく思うことは、時間にせよ人々とのご縁にせよ、仕事やプライベートの体験にせよ、すべてはマクロとミクロの世界で成り立っているということです。
鳥の目で(マクロ的に)、少し引いた目で物事や人間関係を眺め、自身に出来うる「最善」(“最高”ではないところが鍵です)を大切にするよう意図すること。そして、アリの目で(ミクロ的に)、自分の周囲の世界で起こっているあらゆる出来事に目を向け、目に映るよりもずっとずっと小さなレベルで起きていることを感受するということ。この2つを両輪として、自身が世の中の1つの大切なピース(かけら)であることを感じ取り、生きていくこと。そういったスタンスをもつと、今を生きている、この瞬間の自分の世界、ひいては自分と他者が織りなす世界に目を向けやすいのではないかと思います。
今回の最終ワークである、「愛を届けるワーク」は「相手と、そして自分に対して愛を届ける」というニュアンスを含んでいます。子どもたちにせよ彼らの家族にせよ、だれかに対していつも大きな愛のエネルギーを注ぎ続けている保育者の方々にこそ、愛を受け取ることを体験・体感してほしいと思いました。それはマクロ・ミクロの両方の世界観で、細胞でキャッチする情報です。ワークを通して流されたあの美しい涙から、おそらく私の願いは叶えられたのだろうと感じています。
和光保育園では今後も、先生同士の結び付き合いを大切に、対話を重ねていく模様です。時には相手の言動からイライラした気持ちが起こったり、衝突が起きたり、疲労感を覚えたりすることもあるかもしれませんね。そんな時にこそ、今回のワークで感じていただいた「細胞の振動」を思い返して、対話を重ねていく作業そのもの(揉み込んでいる作業自体)が、今この瞬間に生きていることの素晴らしさの1つであるというふうに感じてもらえるならば講師冥利に尽きます。
※次回は、戸塚先生のコラムを受けて、鈴木先生が執筆します。どうぞお楽しみに!
第9回コラムはこちら↓
第9回「みんなの心を大事にしたい」