監修/桑戸真二 解説/小出正治
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・第5回
子どもの命を守る侵入・災害への対策に知恵を絞り、その取り組みを積極的に保護者に発信しよう
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◆ 30%の保護者が、園の安全対策に対して何らかの不安や懸念を感じている
保育所等の第三者評価では、評価の参考として園に対する保護者の声を収集します。国のガイドラインでは利用者調査は努力義務とされ、設問のモデル等も示されていませんが、筆者の知る限り、どの自治体でもアンケートによって園の運営や保育などに対する保護者の意向を把握しています。
東京都では全世帯を対象に、都が設定した質問(その他に、園・評価機関の協議によって質問を追加することも可能)について、評価機関がアンケートを行うこととなっています。今年度の標準質問項目については下記リンク※ からご覧いただけますが、例えば「安全対策が十分取られていると思うか」という質問では支持率が伸び悩む傾向が見られ、東京都が公表している調査対象全園の平均値も、食事や保育活動などの質問では80~90%台であるのに対し、70%にとどまっています。また、安全面に関する自由意見として最も多く寄せられるのが外部侵入対策への不安で、近年は門扉や玄関ドアに電子式の開閉錠を設置する園も増えていますが、それでも「朝夕の出入りの多い時間帯にはだれでも侵入できてしまう」など、セキュリティ面を心配する保護者の声はどの園でも見られます。
◆ 「もしも」の事態をできるだけ多様に想定し、訓練等に反映させて的確な対応につなげる
近年の通り魔・侵入などの凶悪事件が多発する社会の状況から、わが子の身の安全に対する保護者の不安が高まるのも当然のことですが、かと言って、園全体を高圧電線や鉄条網で覆ったり、保護者に行列をつくらせてまで一人ひとりをインターフォンで確認したりするわけにもいかず、また「地域に開かれた」園であることは、公金受託施設としての保育所に対する社会の要請でもあります。『保育ナビ』12月号の脇貴志氏の連載でも不審者対策が取り上げられていますが、多くの園で、園児や職員を外部侵入から守る第一歩として防犯訓練を行っており、さらに可能であれば警察署の協力を仰ぎ、署員の方を招いて指導を受けるなどしています。
保育所などの不審者対策には、子どもや職員をむやみに怖がらせるのもどうかとの理由で、実際の侵入時のようなリアルな緊迫感をもっての訓練が行いづらいことや、職員の大半が女性のため、侵入者の攻撃に対する防御に限界があることなど、様々な難しさがあります。ただ、侵入や災害はいつどのような状況でどういった事態が起こるか、考えうるケースがきわめて多様であるのに対し、訓練で疑似体験できるのはあくまでその一部に過ぎません。第三者評価で多くの園をお訪ねする中で感じるのは、そういった「多様なケース想定」の工夫には、園によって大きな差があるということです。
例えば毎月行う防災訓練では、発災の時間帯や曜日、出火場所などを毎回変えているでしょうか? 「3.11」以後、保育所等での防災意識も急速に高まり、いわゆる早番・遅番の時間帯や土曜日、午睡中・散歩中や夏の水遊び中など、発災時の状況にできるだけ変化をもたせたり、訓練実施の日にちや時刻を職員や子どもに知らせず、予告なしで行ったりするなど、訓練の実効性を高め、あらゆる状況に対応できるよう配慮している園も多くなりました。しかし一方で、今でも時折、毎月同じ時刻に訓練開始、出火場所は毎回「調理室」、という園も見受けられます。
◆ 保護者の不安、不信の芽を摘むための工夫で、共助の関係を確かなものに
不審者対策については、どの園でも敷地内の複数箇所に監視カメラを設置し、事務室のモニターなどで常時監視を行っていますが、訓練に関しては避難・消火訓練のように毎月の実施が義務づけられていないためか、ほとんどの園で年1~2回行う程度のようです。しかし、都市部のビル内の園のように人の出入りが玄関と職員用の出入口のみに限られる場合は別として、不審者の侵入口・侵入経路は園舎・園庭の状況によって様々なケースが考えられるはずです。不審者がここに現れた場合はこのように、ここから入ってきた場合はこのように――など、子どもや職員の退避場所と移動方法を何パターンも想定し、机上でシミュレーションを行ったり、ドアの内鍵の設置など、設備面の強化を検討してみるのも有意義なことではないかと思います。
また、最近は写真や映像も活用して子どもたちの日々の活動や成長の様子を細やかに伝える、いわゆる保育の可視化に取り組む園が増えていますが、訓練の模様や園外活動時の安全確保など、子どもを危険から守る取り組みについても積極的に保護者に発信し、不安の軽減につなげることも大切です。都の利用者調査では、「子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか」という質問も支持率の平均値が66%で、全17問のうち3番目に低い値となっていますが、「実態が保護者に具体的に見えづらい」という点で安全対策と共通しています。いずれも園の方針や行っている取り組みをできるだけ詳細に保護者に伝え、不安や不信の芽を摘むことは、保護者の園に対する信頼を深め、共助の関係をより確かなものとするうえで、重要な方策の1つであると思います。
※ (公財)東京都福祉保健財団『とうきょう福祉ナビゲーション』
(利用者調査・認可保育所用)
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/servicehyouka/31sheets/31pdf/u31_49.pdf
(同・認定こども園用)
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/servicehyouka/31sheets/31pdf/u31_50.pdf
(同・東京都認証保育所用)
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/servicehyouka/31sheets/31pdf/u31_51.pdf
東京都福祉サービス第三者評価における利用者調査結果の平均値はこちらで公表されています。
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/hyoka/topic/2018graphlist.htm
(「サービス種別」ごとの「利用者調査結果」参照)
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監修:桑戸真二・プロフィール:(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。
解説:小出正治・プロフィール:NPO福祉総合評価機構にて、保育・教育施設の第三者評価や事業者ネットワーク「保育所サポートデスク」の運営に従事。自治体の研修講師受託、書籍の共著・編集協力なども手がけている。
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