執筆/吉田正幸

今はまだ小さな1つの事実でも、将来の大きな変化のきっかけになるかもしれない出来事を、保育システム研究所 所長でジャーナリストの吉田正幸先生が紹介します。

《特別編》

  新型コロナウイルスと保育

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、日本でも感染拡大に歯止めのかからない状況が続いています。感染対策がまだ緩かった2月から3月初旬までは、小・中・高等学校等こそ全国一斉休業の要請対象となったものの、幼稚園の一斉休業は要請されていませんでした。一方、保育所のほうは、基本的に開園することを前提にしたうえで、園児や職員が感染したり、地域で感染が拡大していたりする場合、臨時休園を検討することが要請されていました。ところが、緊急事態宣言が発令されて以降、保育所についても地域の感染状況によって、登園自粛や原則休園、臨時休園などが求められるようになり、保育現場でも難しい対応を迫られています。

 

緊急事態宣言が出された都道府県において、知事から保育所の使用制限等が要請されていない場合は、登園自粛(保育の提供を縮小して実施することを検討)を行い、「感染の防止のため、仕事を休んで家にいることが可能な保護者に対して、市区町村の要請に基づき、園児の登園を控える」よう要請することになります。知事から保育所の使用制限等が要請された場合は、原則休園ということになりますが、その場合であっても「医療従事者や社会の機能を維持するために就業を継続することが必要な者、ひとり親家庭などで仕事を休むことが困難な者の子ども等の保育が必要な場合の対応について、都道府県とも相談の上、検討いただきたい」とされています。実際には、医療従事者等の家庭の子どもについては、可能な限り保育を提供することが求められています。
また、園児や職員が感染した場合、あるいは地域で感染が拡大したりしている場合は、基本的に臨時休園することになります。ただし、その場合であっても、医療従事者等の家庭の子どものへの対応として、「訪問型一時預かりや保育士による訪問保育、ベビーシッターの活用等の代替措置」を講じることが求められています。

 

しかし、もう1つ考えておかなければならない重要な問題は、登園自粛や原則休園、臨時休園となって自宅に居続けなければならなくなった子どもたちの保育の保障です。保護者の状況に焦点を当てれば、医療従事者などいわゆるエッセンシャル・ワーカーの場合は、仕事を休むわけにいきませんから、当然その子どもの保育が必要になります。では、エッセンシャル・ワーカーでない保護者や専業主婦家庭の場合は、子どもが保育を保障されなくても仕方ないのでしょうか。
外出自粛が続き、近所の公園の利用さえ遠慮しなければならないような状況になると、親の不安も高まり、愛着障害や不適切な養育、虐待などのリスクが高まります。1日中親としか向き合わず、外遊びもできない環境は、子どもの心身の健康に大きなマイナス要因になりますし、同年齢や異年齢の友だちとのかかわり、親以外の大人との温かいふれ合いがなくなると、子どもの健やかな育ちが損なわれてしまいます。

 

新型コロナウイルスという感染症によって、通常の保育が著しく困難になった中で、それでも子どもたちの健やかな、心豊かな育ちにつながる支援や環境整備はできないものでしょうか。こうした状況だけに、医療従事者をはじめとした子育て家庭への支援も非常に大切ですが、同時に子どもを主体に据えた(親の職業や就労の有無などにかかわらない)保育の保障、育ちの保障を考えることも、保育の意味と価値を考えるうえで重要な課題だと思えてなりません。

 

 

「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム  吉田正幸の保育ニュースのたまご Vol.3(5月1日配信)より