コラム

第5回 漢字のいろいろな読み方・音訓遊び

 

執筆/首藤久義
プロフィール:千葉大学名誉教授。『はじめてつかう漢字字典』の編著者。

 

を、漢字仮名交じり文(かんじかなまじりぶん)で書くと、どうなるでしょう?

となりますね。
ここには「長」という漢字が2回使われています。
どことどこにありますか?

の2か所に使われていますね。
漢字は同じ「長」なのに、その読み方には違いがあります。
どう違うか、確認(かくにん)してください。
「校長」の「長」は、「ちょう」と読まれ、
「長話」の「長」は「なが」と読まれていますね。
このふたとおりの読み方は、

です。
音読みと訓読みの2種類の読み方を、まとめて、音訓(おんくん)と呼ぶこともあります。

 

フレーベル館の『はじめてつかう漢字字典』を開くと、漢字の音読みと訓読みを読み込んだ「音訓遊び(おんくんあそび)」がたくさん見つかります。
その1つを次に紹介(しょうかい)します。

 

の順(じゅん)で出ていますね。
「左」を「ひだり」と読むのが訓読みで、「さ」と読むのが音読みです。
「右」を「みぎ」と読むのは訓読みで、「ゆう」と読むのは音読みです。
このような音訓遊びを声に出して読んだり、自分で工夫(くふう)して作ったりして遊ぶと、漢字の音訓がいつの間にか身につきます。そこに、音訓遊びの楽しさがあります。

 

次の音訓遊びは、小学校低学年で習(なら)う「空」という漢字の音訓遊びです。
「空」のどんな読み方が何種類(なんしゅるい)出ているか。

 

「あ」「そら」「くう」の3種類が出ていますね。
次の音訓遊びはどうでしょう?  

 

「音」と「楽」という漢字の読み方が2種類ずつ出ています。見つかりましたか?
次はどうでしょう?

 

「北斗七星」とは、北の夜空(よぞら)にひしゃく型(がた)に並(なら)ぶ七つの星という意味です。
漢字「斗」の成り立ちについての詳(くわ)しい説明は、末尾の【補注1】をごらんください。

 

次の音訓遊びは、小学中学年で習う「去」という漢字の音訓遊びです。
どんな読み方が出ているか見つけてください。

「さ」「きょ」「こ」の3種類が出ていますね。
次の音訓遊びはどうでしょう?  

「打」と「投」という漢字の読み科方が2種類ずつ出ています。見つかりましたか?
次はどうでしょう?

 

次の音訓遊びは、小学高学年で習う「粉」という漢字の音訓遊びです。
どんな読み方が出ているか見つけてください。

「こ」「ふん」「こな」の3種類の読み方が出ていますね。
次の音訓遊びはどうでしょう?  

「永」と「久」という漢字の読み方が2種類ずつ出ています。見つかりましたか?
次はどうでしょう?

 

小学校で習う漢字の音訓の中には、音読みだけしかなかったり、訓読みだけしかなかったりすることがあります。次に示すのは、その例(れい)です。(訓読みは平仮名で、音読みは片仮名で示しています。)

これを見て、あれ?と思われる読者(どくしゃ)もいるでしょう。その説明(せつめい)は末尾(まつび)の【付録】の(2)をごらんください。

 

漢字の読み方に、音読みと訓読みがあるというのがわかったと思います。
それがわかっても、どの読み方が音読み、どの読み方が訓読みかを見分けることは、簡単(かんたん)なことではありません。
これが、案外(あんがい)むずかしいのです。
でも、安心してください。音読みと訓読みを見分けられるようになる必要はありません。
漢字を使って読み書きすることができるようになるためには、漢字のいろいろな読み方を知るだけで十分です。
ある漢字の音と訓の区別を知りたくなった場合は、漢字の辞書を見ればすぐにわかります。
例えば「左」の読み方は、次のように、音は片仮名で、訓は平仮名で示されています。


音読みと訓読みについてもっと詳(くわ)しく知りたい読者(どくしゃ)は、末尾(まつび)の【補注2】をごらんください。

 

 

 

【補注1】北斗七星の「斗」の意味は「ひしゃく」

「ひしゃく」という意味(いみ)をあらわす漢字「斗(と)」が、できた流れを図(ず)に示すと、このようになります。

【補注2】音読みと訓読みの由来(ゆらい)と特色(とくしょく)
「水」という漢字の音読みは「すい」であり、訓読みは「みず」です。
音読みは、もともと中国で読まれていた読み方をそのまま取り入れた読み方です。英語にたとえて言うと、「water」を「ウォーター」と読むような読み方です。
訓読みは、漢字を大和言葉(やまとことば:もともと日本で使われていた言葉)で読む読み方です。漢字を日本語に翻訳した読み方なので、「翻訳読み(ほんやくよみ)」と言ってもよいでしょう。英語にたとえて言うと、「water」を「みず」と読むような読み方です。訓読みのほうが、その読みを聞いただけで意味がわかりやすいと感じられるのは、そのためだと考えられます。

【補注3】「肉」(にく)は音読み。「矢」には音読みがある
①「肉」(にく)は音読み
「肉」を「にく」と読む読み方は訓読みだと感じる読者もいると思います。が、この読み方はもともとの中国音に由来(ゆらい)する読み方なので、音読みに分類(ぶんるい)されます。
次の読み方も、訓読みに感じられるかもしれませんが、同じ理由で音読み分類されています。

同じような漢字は、ほかにもあります。

②「畑」は国字
「畑(はたけ)」という漢字に訓読みしかないのは、この漢字が日本で生まれた漢字(国字:こくじ)だからだと考えられます。日本で生まれた漢字だから、中国語の読み方(音読み)がないのですね。しかし、例外もあります。例えば「働く」や「労働(ろうどう)」の「働」という漢字は、「動」に「にんべん」(人の意味がある)と「動」(うごくという意味がある)を合わせて日本で作られた漢字(国字)ですが、この漢字「働」には、「ドウ」という音読みがあります。「動」という漢字の音読み「ドウ」をもらったのだと思われます。

③「矢」には音読みもある
さきほど、「矢」に「や」という訓読みしかなかったり、「坂」に「さか」という読み方しかなかったりすると述べましたが、それは、小学校で習う読み方に限(かぎ)った場合のことです。一般の読み方では、「一矢(イッシ)報(むく)いる」「登坂(トウハン・トハン)」などのように、「矢」には「シ」という音読みがあり、「坂」には「ハン」という音読みがあります、ほかの漢字についても、同じことが言えます。

人名や地名などの固有名詞に使う場合は、さらにいろいろな読み方が行われます。

【付録3】北斗七星の「斗」の意味は「ひしゃく」

これは、昔のひしゃくの絵と、ひしゃくを表す古代文字と、今の漢字「斗」(と)です。

<次回も漢字が楽しくなるコラムをお届けします! お楽しみに>

 

今回は、首藤先生のお話に出てきた「音訓遊び」の特長をご紹介します!

 

『はじめてつかう漢字字典』の1年生で習う漢字のページです。
「右」という漢字がありますね。
これを拡大してみると……。

赤で囲んだ部分が「オンくんあそび(音訓遊び)」です。

左手右手(ひだりてみぎて)、左右(さゆう)の手

声に出して読んでみると……、リズムが良くておもしろいですね!
自然と漢字の使い方や音訓の読み方も覚えてしまいそうです。

このような楽しい「オンくんあそび」がたくさんの漢字に登場しますよ。
いくつかご紹介しましょう。


ぜひ一度、手に取ってみてくださいね。

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監修/村石昭三(国立国語研究所 名誉所員)
編著/首藤久義(千葉大学 名誉教授)

古代文字/浅葉克己 イラスト/坂崎千春+井上雪子
ブックデザイン/祖父江慎

規格 : 22×15cm 412ページ
ISBN : 9784577814468

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