コラム

コラム 知っておきたい!園経営の視点 第12回 

桑戸真二(株式会社フレーベル館保育経営アドバイザー)、湯浅重数(株式会社hugmo 代表取締役社長)

経営コンサルタントである桑戸真二先生が『桑戸的な視点』と題して時事問題を取り上げ、保育・園経営に役立つ情報をお届けします。

■ 第12回 就学前子ども施設のICT化 ■

今回は、就学前子ども施設におけるICT化に目を向けてみましょう。

厚生労働省の平成27年度補正予算「保育所等における業務効率化推進事業」にて、保育士の業務負担軽減を図るため、私立保育所等でICT化推進のための保育システムを購入した場合、1カ所当たり最高100万円まで、100%補助(国3/4、市区町村1/4)を打ち出しました。国もICT化を推進していますが、実際のところ、多くの就学前子ども施設(以下、「園」という)では、まだまだ「紙」、「手書き」を大事にしているように思います。

そこで、ICTに精通し、システム開発者であられる湯浅重数氏に園のICT化についてお伺いしました。

桑戸:

保育者の業務負担軽減のため、園のICT化はどのくらい進んでいるのでしょうか。湯浅氏はどのような感触をお持ちでしょうか?

湯浅:

園でのICT化の予算の確保が難しく、国や自治体からの支援が必要な状況です。ICT化のためには業務を効率的に行うためのアプリケーションやサービス等のシステム、またそれらを活用するためのパソコンや携帯端末等の備品が必要です。特に携帯端末については保護者や保育士でもスマートフォンの保有率が90%以上(当社調べ)に対して園には導入が進んでおりません。システムや備品も補助金対象となっている厚生労働省が27年度補正予算として公示した「保育業務の効率化にかかわるICT促進についての補助金」の全国での執行率は10%程度と聞いています。このことから本格化するのは、これからだと考えます。

桑戸:

これまでICTに縁のなかった園が、ICT化への第一歩を踏み出すには、どこからどのように導入するのがいいか、アドバイスをいただけますか?

湯浅:

今は、園向けに様々な業務支援ツールが揃いはじめています。すべてのデータの中心になるのは、園児台帳のデータです。我々の調査では、保護者から提出された調査票をそのままファイリングしている園も多いことが判明しています。園児ごとに調査票を含めた紙情報を1つにまとめ、キャビネットに収納しているようです。園児ごとのファイリングに慣れておられるので、園児台帳のデジタル化は抵抗なく移行できると思います。同時に、連絡帳アプリなどの保護者とのコミュニケーションツールの導入を進めるとスムーズです。ツールを導入する際には、インターネットなどのネットワークに接続されたパソコンやスマートフォン等からクラウドサービスを利用する方法をお勧めします。安全で更新の手間も無く、初期投資も抑えられます。

桑戸:

パソコンやスマートフォン等が苦手な保育者にとっては、業務の負担を軽減する目的が逆に負担になることはありませんか?

湯浅:

パソコンやスマートフォン等が苦手な方にも、操作しやすいようにアプリのUI(操作画面)は設計されていますので、ご心配はいらないと思います。システム技術も日々向上していますので、今後さらに操作が楽になっていくでしょう。実は、苦手とおっしゃる方のほとんどは、文字入力に慣れておられないために敬遠する傾向があります。そのような方こそ音声入力や定型文等の入力支援を使っていただきたいです。すぐに慣れるはずです。

桑戸:

実際に導入した園はどのように変わりましたか?

湯浅:

保育者の業務負担軽減以上の効果が出ているようです。ある園長先生のお話では、保育者同士が、気になる園児の様子を共有できるツールとして使い、保育の質の向上に役立てているそうです。また、新任保育者にとっては、先輩保育者の記録の仕方を見て学んでいるだけでなく、先輩保育者の視点にも気づく機会となっているそうです。園長先生や主任等の管理者は、保育者の育成の観点を持って、連絡帳の内容を見に行くこともあると聞いています。どの園でも、園児の情報をリアルタイムで共有できるという点を最大限に活用されておられます。

保護者からの反響も大きいです。ICT化により、写真による園の様子や各種お知らせ、スケジュールが手元のスマートフォンにリアルタイムに届くというのは、保護者側の利便性が大幅に向上します。また、日頃の子どもの様子が見られることで、安心感と園に対する信頼が醸成されているようです。

今回のメルマガはいかがだったでしょうか。また、次回もよりよい情報をお届けしますので、どうぞお楽しみに!

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桑戸真二・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会理事、NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館保育経営アドバイザー。幼稚園・保育園から認定こども園への移行に関するコンサルティングなどを多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

湯浅重数・プロフィール:株式会社hugmo 代表取締役社長、ソフトバンク株式会社 ITサービス開発本部、アプリケーション&コンテンツサービス統括部長

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2017年3月15日号「コンサルタント・桑戸的な視点」より)

 

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