コラム

知っておきたい!園経営の視点 第3回 

桑戸真二(株式会社フレーベル館顧問)、木元有香(鳥飼総合法律事務所弁護士)

■ 第3回 園児の事故に関する保護者対応 ■

『桑戸的な視点』、今回は、園児の事故に関する保護者対応について考えてみます。

昨今は園内での園児の事故で裁判沙汰になることが少なくありません。事故が起きた場合の保護者対応はとても難しい訳ですが、園側の不用意なひと言や対応で保護者との関係がこじれたり和解が困難になったりすることも少なくないと思われます。そこで、適切な保護者対応、気をつけたい不用意なひと言や対応について園児のママでもあり、保育士資格も持つ、鳥飼総合法律事務所の木元弁護士に聞いてみました。

<アドバイス>

ママ保育士・弁護士の木元です。よろしくお願いします。

事故による怪我・症状の程度により、救急車を呼ぶのか、病院に連れて行くのか、それとも園内で処置後に安静にして様子をみるのか、など、当該園児への対応は異なるでしょうが、いずれの場合にも、すぐに当該園児の保護者に連絡をとることが鉄則です。保護者の心に、「すぐに連絡をくれていたら~だったのに、どうしてすぐに連絡をくれなかったの?」という不信感が生まれてしまうと、その不信感はなかなか消せません。

また、園からよくされる質問に、「園に法的な責任があるかないかわからないうちから、保護者に謝ってよいのでしょうか?」というものがあります。大抵の場合、園としては謝罪したい気持ちはあるのだが、事実関係の曖昧なうちに園が謝ることで、後々、別のトラブルが生じないかを懸念していらっしゃるようです。

私は、「『園が全面的に悪かったので、全て責任を負います』などといった、後々トラブルになることが目に見えているような謝り方でない限り、謝っていただいて構いません。むしろ、謝らなかったことによるトラブルのほうが多いように思います」と、ご回答しております。この謝罪は、事故により当該園児が痛い思いをしたことに対する申し訳ないという謝罪であり、事故により保護者にご心配をおかけし、不快な思いをさせたことに対する謝罪です。

「どういう状況で事故が起こったのか」についても、①判明している範囲で正確に保護者にお伝えすることや、②すぐにわからないのであれば、「今後調査して、できるだけ早くにまとめてご報告します」とお伝えすることも忘れないでください。

「何が、どうして起きたのか、どうすれば避けられたのか」は、園児が事故に遭った場合に保護者がいちばん知りたい情報でしょうね。保護者の質問に誠実にお答えする必要がありますね。その次に保護者が知りたいのは、園がどのような責任を取ってくれるのかということになりますか?

<アドバイス>

そうですね。園がどのような責任を取れるかは、園がどのような法的責任を負うか、と密接に結びついていますので、直ちに弁護士や保険会社に相談して、速やかに保護者にお伝えするのが良いでしょう。保護者とのトラブルが大きくなる原因の1つには、園の対応の遅さや、逐一報告していない、というものがあります。

適切な保護者対応や気をつけたい不用意な対応についてはわかりましたが、気をつけたい不用意なひと言というものはありますか?

<アドバイス>

これは沢山ありすぎて難しいですね。時と場合、保護者がどのように受け止めるかに大いに左右されますから。

ただし、言えることは、日頃から保護者との間に強い信頼関係が構築されていれば、ついうっかり不用意なひと言を言ってしまった場合でも、すぐに謝罪すれば、大きなトラブルにはならないということです。逆に、保護者が日頃から園に対して不信感や不満を持っていた場合は、園がいくら適切な言動をしても、裁判沙汰になりかねません。

今回のメルマガはいかがだったでしょうか。また、次回もよりよい情報をお届けしますので、どうぞお楽しみに!

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桑戸真二・プロフィール:一般財団法人総合福祉研究会理事、NPO法人福祉総合評価機構専務理事、(株)福祉総研代表取締役。(株)フレーベル館顧問。社会福祉法人の新規設立・複合施設の企画・立案等を多数手がける。関係省庁・団体とのつながりも深い。

木元有香・プロフィール:鳥飼総合法律事務所で社会福祉法人・保育施設等を担当する弁護士。平成26年に保育士資格取得。東京都認可保育所及び私立幼稚園を経て認可保育所に通う5歳児と、同じ認可保育所に通う2歳児の2児のママで、この夏、第3子を出産予定。

保育ナビ倶楽部 会員限定メールマガジン 2016年6月15日号 「コンサルタント・桑戸的な視点」から)

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